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代理人社会保険労務士の役割

今回は、あっせん手続きにおける代理人社会保険労務士の役割を考えます。

あっせんの申請(主に労働者)、あるいはあっせん申立てを受けて応じるかどうかを検討されている(主に会社の)方は、「あっせん」についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

労働局で配布されるパンフレット※1には、「あっせん」の特徴が次のように書かれています。
 「裁判に比べ、手続きが迅速かつ簡便です」
 「費用は一切かかりません」
 「受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持つこととなります」
 「労働者があっせんを申請したことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています」

これで安心して紛争解決を委ねることができそうですが、実は「あっせん」による解決率はあまり高くありません。※2

利用者が「あっせん」によって納得できる解決を得るためには、必要なものがあります。代理人の役割はそれを補うことにあります。

そもそもあっせん等の裁判外紛争解決手続きが導入された目的の一つは、敷居が高くて利用を躊躇してしまう裁判のほかに、当事者本人がアクセスしやすい解決手段を用意することでした。

しかし同時に、国の施策は、利用者に“ある資質の標準装備”を求めています。

2000年に発表された司法制度改革審議会中間報告には、次のような記述があります。「国民が統治の主体として自ら責任を負う国柄へと転換する中で・・・個人や企業等の活動の自由が拡大し・・・個人や企業等はより主体的、積極的にその社会経済的生活関係を形成していくことが期待される」。

要するに、〔自己責任時代にシフトするから今後は一人ひとりが受け身でなく主体性、積極性を持って下さいね〕、ということなのでしょう。

そこで、当事者による「自主的」解決を第三者が支援する手続きがあっせんです。

※1 「労働者、求職者、事業主のみなさまへ 職場のトラブル解決サポートします「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく3つの制度のご案内」 p6
※2 厚生労働省Press Releease 「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」における合意成立は32.4%、打ち切りは61.9%です。

労働者側からみたコメント

紛争当事者(労働者と使用者)のうち、あっせんを申請するひとは9割以上が労働者です。

あっせんにおいては、会社側に違法性があったとしても、それで自動的に労働者の主張が認められたり、会社が金銭を支払うような命令が下されたりすることはありません。

それでも簡易・迅速・廉価な手続きを選択するなら、その枠組みのなかで自身の利益の最大化を目指す工夫が必要になります。

申請人にとって、無料で簡単な手続き、そして1回で終わるあっせんは魅力的です。

確かに、労働局のあっせんはA4用紙1枚に自分と会社の氏名、住所、電話番号を書いて、何を求めるのか、そしてこれまでに会社に要求を出して拒否されたという経緯を数行書くだけでも申請は受理されます。

しかし、実際のあっせん委員(解決を支援する第三者)からは「労働者が法的に重要な問題点を申請書に書き洩ら(す)」懸念や、「労働者が作成した申請書では、紛争の実情すら把握できないものが少なくない」ことが指摘されています。※3

やはり紛争解決のために申請書は、詳細で分かりやすくいだけでなく、任意参加のあっせんに相手方が応じたくなるインセンティブを盛り込む工夫が必要なのです。

次に、申請してからあっせん当日までの間にも、事案によっては当事者間で連絡を取り合うことがあります。

どのように回答するべきか、あるいは回答を留保するのか、一般的な労働者であれば判断に迷うこともあるでしょう。

そしてあっせん当日、会社から労働者の落ち度を指摘されたり請求の減額を求められたりするので、労働者は根拠を示して否定をし、要求実現のために代替案を提示します。

特にハラスメント事案などは、労働者側の受け入れ難い心情は理解できますが、そもそも「あっせんは双方が互いにどこまで譲歩できるかが大きなポイント」※4なのです。

このように代理人を立てない場合、申請人が主体性を持ってあっせんを使いこなすことが求められます。ところが、一般的な労働者は、「公権力から白黒つけてほしい」というような期待を持っていることが多いために不利なところがあります。

当事務所のこれまでの依頼者は「ひとりじゃ太刀打ちできなかった」、「自分でやっていたらこの解決にはならなかった」と仰っています。

代理人の役割とは、そのようなところにあるのだと思います。

※3 「労働局のあっせんと社会保険労務士の役割」弁護士君和田伸仁 「月刊社労士」2010.5 p12
※4 「あっせんの参加にあたって」(東京労働局発行「あっせん期日に関するご通知」同封文書)

会社側からみたコメント

会社側のほとんどは、あっせんを申し立てられた側の当事者です。ここで、強制力のないあっせんだからと言って放置しては、早期解決のチャンスを失います。 

あっせん等の裁判外紛争解決手続き(ADR)が導入されたもう一つの目的は、「紛争の深刻化の防止」です。

前述の司法制度改革審議会中間報告には、ADRは、「利用者の自主性を生かした解決、プライバシーや営業秘密を保持した非公開での解決、簡易かつ迅速な解決、法律上の権利義務の存否にとどまらない実情に沿った解決を図ることなど、柔軟な対応が可能」とあります。

使用者にとってADRで解決するメリットは、この「非公開、簡易かつ迅速」に加え「実情に沿った解決を図ること」ではないでしょうか。

例えば、労働審判手続きに対する利用者満足度調査※5というものがあります。

労働審判の結果について「解決の適切性」「結果の有利性」「結果満足」を利用者(紛争当事者)が評価したところ、労働者側利用者の満足度が高いことは想像通りとしても、使用者側は、企業規模で評価傾向が分かれました。

大企業使用者は比較的高評価を示しているのに対して、中小企業使用者はいずれの項目にも低い評価、否定的な回答をしたのです。

中小企業使用者のインタビューでは、「労働審判はもう圧倒的に労働者の立場に立った内容になっている」「こちらの言い分も聞かないで(労働審判委員会から、解決金の)金額がポッと出てきた」といった不満の声が上がっています。

同じ使用者側でも大企業と中小企業で評価が分かれた背景にあるものは、中小企業は大企業のように労務管理の法的知識を持った人材を確保できていないという実態です。

代理人社会保険労務士は、労務管理の法的知識はもちろん、あっせんで終結させた場合とその後労働審判や裁判に発展した場合の時間的経済的負担、他の社員への影響等さまざまな情報を提供します。

最終的に労働者からの請求にどう対処するべきか、あっせん委員(あっせん手続を担当する紛争調整委員)からの提案が妥当な解決かどうかといった使用者の判断を支えます。

裁判外紛争解決手続の最大の特徴は、法的な押し付けではない解決を当事者が自ら選択することで納得し、合意内容の実効性が高まるところにあります。

「解決水準があまり高くない労働局のあっせん段階で、早期に紛争を解決することは、企業にとってはメリット」※6が大きいのです。

※5「労働審判制度利用者調査から見た中小企業経営者の意識と行動」佐藤岩夫、2014 中央労働時報1178号
※6 前掲「労働局のあっせんと社会保険労務士の役割」

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