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訴えられたときの会社としての対応

今回は、在職従業員Xらから、未払い残業代請求で訴えられた会社がとった言動によって、会社側に更に不法行為責任が求められた事例を見てみます。 

概要

会社は固定残業代制を導入しましたが、従業員らは納得せず、従来の計算方法による残業代を請求する訴訟を提起しました。

訴えた従業員Xらは在職中ですから、訴状が届いた会社はすぐにこの従業員らと話しをしました。

1.「(X3に対して)君の真意を聞きたい。会社を訴えるなんて大変なことなんだぞ。訴えた者の名前、金額を全社員の前で公表してもいいんだぞ。」

2.「訴訟を起こされた。まさかX4に請求されるとは思っていなかった。入社して1年半のお前を工場長に取り立ててやったにもかかわらず、つくづくお前にはがっかりした。どういう意図で訴訟を起こしたのか、その真意を知りたい。聞かせてくれないか。」

3.「(X2に対して)ひげはいらない。」、「(朝礼において)身だしなみに気を付けるように。特にひげ」、「(X2に対して)きちんと剃るように。」

上記事例は、サンフリード事件(長崎地裁 平成29年9月14日判決)です。

結論から言うと、上記言動の「1」と「2」は、適切さを欠くものの違法とまではいえず、「3」は人格権侵害の不法行為と認められ、慰謝料5万円と弁護士費用5千円の支払いが命じられました(この不法行為に対してのみです。これに加え5人分の未払い残業代が認められています)。

背景

会社側は、「1」の発言の2日後に「2」の発言をしていますが、訴訟の取り下げなどは要求していません。

X2は、入社してから9年以上あごひげを生やして仕事をしてきましたが指導されたことはありませんでした。

なお、会社は食品を扱っていますが、X2は運転手であり、あごひげが顧客に不快感を与えるような状態を裏付ける証拠はありませんでした。

従業員側から見たコメント

労働紛争のほとんどは、従事者側が会社を相手に要求するものですから、一般的に退職してから行動します。

在職中に行動を起こした場合、勤務先において様々な不利益を受けるのではないかと心配されてのことと思われます。

どんなに法律*1では「(従業員に)不利益な取り扱いをしてはならない」とされていても、そもそも違法な労働条件下で働いてきた従業員にとっては、必ずしも安心できる材料とはなっていないようです。

それでも上記事例のX3は、会社代表から「(訴訟の)真意を聞きたい」と言われて、残業代について納得していない旨を答え、毅然とした様子が伺われます。

行動を起こした以上、たとえ専門家に任せたとしても24時間付いていることはできないので、ご本人にこのような覚悟は必要になります。

会社側から見たコメント

現実には、訴訟の前に請求書を送付しただけでも従業員に深夜、何度も電話をしたり、罵詈雑言のメールを送ったり、という反応を示す会社があります。

しかし、このような行為は不法行為を構成する可能性があり、会社にとって良い効果をもたらすことはありません。

まして従業員に解雇、配置転換、降格、給与の引き下げなどの不利益を告知して訴えの取り下げを要求するなど行うべきではありません。

会社としては、従業員の考えを確認することができれば早期解決を図り、その先にある今後の労務管理を見直す機会と捉えることはできないでしょうか。

次に、あごひげについてですが、扱う商品や職務内容によっては相応しくないと判断され、服務規程で禁止している会社もあります。

はじめから根拠のある禁止事項として徹底していなければ、上記のような言動は不法行為に該当する可能性が高まります。

*1:労働基準法19条、104条、育児介護休業法10条、男女雇用機会均等法9条、労働組合法7条、雇用保険法73条など。

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