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求人票と実際の労働条件が違うとき

今回は、求人票と実際の労働条件が違うとき、どちらが労働契約内容となるのかが問題になった事例をみていきます。

概要

事業所Yは、福祉施設の開設に伴い、管理責任者の求人をハローワークに出しました。求人の内容は次のとおりです。

  • 月給25万円
  • 雇用期間の始期 2月1日
  • 雇用期間の定めなし
  • 定年制なし

この求人に応募したXは64歳、面接で定年制がないことを質問したところ、Y代表者は「まだ決めていない」と回答しました。

その後Xは採用されますが、2月中は、Xの都合の良い日の出勤で足りると言われて時給で11日間就業し、3月1日からフルタイムでの就業を開始しました。

この日の午後、提示された労働条件通知書に、Xは特に内容を意識せずにサインしました。前職を辞めて来ているのでここで拒否すると失業状態になると思ったからです。

ところが、入社間もなく従業員Xは、交通事故で休職することになりました。数か月後に復職してからのY代表の対応に不満を持ったXは労働組合に相談して、労働条件が有期雇用契約で、定年有りとなっていることを認識しました。

Y事業所は、Xをフルタイム勤務開始から1年後に労働契約終了としました。

Xの従業員としての立場はどうなるのでしょうか。

上記事例は、福祉事業者A苑事件(京都地裁平成29.3.30判決)です。

結論から言うと、求人票の労働条件が認められ、Xは従業員の地位にあるから、判決確定の日までの賃金支払いが命じられました。

なお、提訴から判決までの期間は約1年10か月です。

背景

Y代表者は、求人票を別の役員に作成させて、そのとき、できるだけ多くの応募があるように記載するよう指示をして、出来上がった求人票の内容を把握していませんでした。

実際の契約内容は契約時に決めればよいと考えていた、といいます。

また、契約締結時に64歳という年齢が労働条件の違いによる不利益の判断に大きく影響しています。

64歳の就業者にとって、期間の定めなし定年制なしの労働契約であるはずが、1年の有期契約で65歳定年に変更されてしまっては、不利益は重大です。

コメント

求人票と実際の労働条件の相違はトラブルが多く、ハローワークでも求人を出す事業者に注意喚起がされています。

事例の事業者は、そのような事情をあまり意識されていなかったようです。

加えて従業員Xが、フルタイム勤務開始から20日足らずで数か月の休職に入ったことは、やむを得ない事情とはいえ、事業所としては大変な痛手です。

施設開設のスターティングメンバ―の責任者として採用したのに、これから頑張ってもらおうというときに休職されたのですから、対応には苦慮されたと思います。

それが、復職後の従業員Xの対応に現れたのかもしれません。

まとめ

従業員側

事例の従業員Xは、面接で定年について確認しています。このとき代表者Yの「まだ決めていない」という回答には、もう一歩踏み込んで「こちらで働きたい気持ちですが、自分の年齢にとって、定年の有無は重要だから採用前に提示して頂けませんか」などと質問できるとよかったのですが、求職者のお気持ちも分かります。

ただ求職者と求人会社は対等です。

求人に応募したときは、面接で、求人票に書かれていることでも質問します。

例えば、「残業は月何時間くらいありますか。残業は許可制ですか」、「有休休暇はありますか。有休取得の手続きはどうなっていますか」など。すぐに返答がない場合は、制度化されていないか、有休消化率の低さが推察されます。

また労働条件通知書の内容はよく確認する必要があります。自分を一番守ってやれるのは自分です。求人票はハローワークのフィルターを通って労働条件の合法性が担保されていますから、求人票との突合せをするとチェックが容易です。「労働条件が求人票と違う」ご相談は

使用者側

上記事例では、求人票の記載内容について概ね次のように判示されました。

(求人票は、会社が労働条件を明示した上で、求職者の雇用契約締結申込みを誘引するもの。求職者は、当然に求人票記載の労働条件が雇用契約内容となることを前提に申し込みをする。だから、当事者間で別段の合意をしたわけでもないのなら、求人票の労働条件は雇用契約内容になる。)

求人票を出す時点で未定のことがあれば、最低限明記しなければならない事項以外は、「相談による」などとします。

しかし、有期雇用であるとか、定年制は必須事項ですから、少なくとも求人を出すにあたっては整備するべきインフラです。上記事例の事業所は、フルタイムの就業開始にあたって社会保険労務士に労働条件の助言を受けていたのですが、それでは間に合わないことが分かります。

余談ですが、必ずしも多くの応募者に来てもらうことが良い人材の採用につながるとは限りません。選択肢が多いほど有利なように思いがちですが、特に中小企業は、求める人材をスキル、労働条件、職場環境など多面的に可能な限り詳しく記載すると閲覧者にも響くので、応募総数が減ることになっても、ぴったりな人材が来てくれるなら、不要な書類審査や面接の労力を省くことができます。ご相談は

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