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違法とされたパワハラの具体例

パワハラに関してお悩みの方(労働者側も使用者側も)へ、具体的な事案の解決や対策を取るにあたって参考になる、あるパワハラ事件をご紹介します。

概要

会社は消費者金融業を営んでおり、パワハラ行為者は事業部長、パワハラ被害にあったのは、債券回収業務を行う、その部下の方々で複数人に及びます。

具体的には、次のような行為(抜粋)がありました。

  1. 従業員X1(部下)が、部長の提案した仕事のやり方を採らなかったことに対して、X1に説明を求めることもなく「俺の言うことを聞かないということは懲戒に値する」と強い口調で叱責し、「今後、このようなことがあった場合には、どのような処分を受けても一切意義はございません」という内容の始末書を提出させた。
  2. 会議の席で、従業員X1が業務改善の提案をしたところ、事業部長は激しく怒り出し、「お前はやるきがない。明日から来なくていい」と述べた。
  3. 従業員X2(部下)に報告ミスが発覚したときは、「給料をもらいながら仕事をしていませんでした」という念書を書かせた。
  4. 風邪を引いた従業員X3(部下)に対し、「気持ちが怠けているから風邪を引くんだ」、「(X3の配偶者のことを)よくこんな奴を結婚したな。物好きがいるもんだな。」と発言した。
  5. 事業部長は、喫煙者である従業員X1、X2のたばこの臭いがくさいと言って、扇風機をX1とX2に向けて固定し、風を当て続けた。12月から翌5月までの間に、時には2台から3台の扇風機をX1とX2に向けて風を当てた。
  6. 席替えのときに事業部長が「うるさい」と言って、従業員X3の背中を腕で殴打。さらに近くにいた次長らに対して「お前らもやれ」と暴力を強要。また、業績不振に対して「よくならないと君らが職を失うだけだ」、「駄目だったら追い出すからな」などと叱責しながら、「お前」などと言い足の裏でX3の膝を蹴った。

上記事案は、日本ファンド(パワハラ)事件(東京地裁平22.7.27判決)という裁判例です。

結論から言うと、上記1から6の行為は全て裁判で不法行為と認定されました。

扇風機の風を当てられ続けて抑うつ状態となり休職した従業員X1には、療養費と休職中の賃金および精神的苦痛に対する慰謝料60万円、従業員X2には慰謝料40万円、従業員X3には慰謝料10万円、そして事業部長の不法行為について会社は使用者責任を問われ、事業部長と連帯して支払いを命じられました。

ここで、当サイトがたびたび書いてきたとおり、ハラスメント問題は、行為だけを切り取って「これはセーフ」、「これはアウト」という判断をすることはできないので、事例の背景に着目します。

背景

(1)従業員X1は、もともと欠勤がほとんどありませんでした。

そのX1が、次長(おそらくX1の直属の上司か)に「(扇風機の風をあてられて)体がもたない」と訴えたのに、次長は「涼しくて気持ちいいじゃないか」などと言い、真摯に対応しなかったことから、精神的に限界を感じて翌日に心療内科を受診するに至りました。

これらの経緯から従業員X1の抑うつ状態は事業部長による扇風機の風あてとの因果関係が認められました。

(コメント)

原因事実と医療機関受診の時期が近接していることがポイントです。

また、もしパワハラを受けているなら自分ひとりで抱え込まずに、周囲へ相談することはとても大切です。

「相談しても何も変わらない」と諦める方がいらっしゃいますが、相談したという事実を残す必要があります。

また、「やめてほしい」という意思表示をすることも勇気がいると思いますが、非常に重要です。

後で相手方に「そんなに悩んでいるとは知らなかった」などといった言い逃れをさせないためです。

これは、セクハラや他のハラスメントについても同じことが言えます。「嫌がっているとは思わなかった」などという言い訳が通用しないように、拒否と相談の記録を残します。

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(2)上記1の行為の前から、事業部長は宗教新聞の購読を部下に勧誘して、拒否した部下を叱責していました。

従業員X1もこの新聞購読を断っており、1の行為はそれから約4か月後に発生しています。

さらに、事業部長は、会社が決めた債権回収目標より高い目標を設定して、達成できなかった部下に対し、他の従業員も多くいるなかで「馬鹿野郎」、「会社を辞めろ」、「給料泥棒」と叱責するなど、常態として、著しく一方的で威圧的な言動、極めて横暴な態度があり、部下は退職強要を恐れて受忍を余儀なくされていました。

裁判において、事業部長らは、上記1,2,3の行為について「業務上の怠慢に対する必要かつ相当な注意であった」と主張しましたが、前述の事情の中での事業部長の言動は、「社会通念上許される業務上の指導」を超えている、と判示されました。

上記4の行為についても事業部長らは「いい奥さんが結婚してくれたね、という趣旨の昼食時の普通の会話」であると主張しましたが、裁判所には信用されませんでした。

(コメント)

例えば、日頃仲の良い上司に上記4のようなことを言われても、それだけで問題になるとは考え難いです。

パワハラの違法性判断には、背景事情が考慮されます。

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(3)会社が事業部長の行為について使用者責任を問われた背景には、事業部長の不法行為が、職務の執行中かその延長上(昼食時)に行われていたことがあり、職務の範囲内の行為に属するものであることは明らかであると判示されました。

(コメント)

判決には触れられていませんが、会社がパワハラの存在を知っていながら、適切な対応をとってこな
かったことも影響していると考えられます。

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(4)事業部長のパワハラ行為を会社が知る機会はいくつもありました。

X1は、匿名の嘆願書をもってパワハラを告発しています。

また、労働組合作成の文書には、事業部長によるパワハラに係る事実が記載されています。

さらには、訴訟の数年前に、やはり事業部長から新聞購読を断って異動させられた上、退職勧告を受けたとして退職した従業員がいました。

人事統括部長は、この従業員から、新聞購読を拒否した後に嫌がらせをされたことや、サービス残業、無休の休日出勤が常態化しているという報告を受けていました。

(コメント)

会社は、相談者の意向を尊重した上で本当にパワハラがあったかどうかを調査し、事実であれば就業規則に則り行為者を処分する、また行為者と相談者が接触しないような配慮をする、などといった対応が必要でした。

使用者は、従業員が安全に働ける職場を整備する安全配慮義務があります。

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(5)上記2から6は、就業規則に「パワーハラスメント禁止」規定が新たに追加された後に発生した行為です。

(コメント)

規程を整備しても実効性を伴う運用がなされていなかったのでしょうか。

組織におけるパワハラ禁止の取り組みは、使用者による「ハラスメント禁止」というメッセージの発信に始まって、就業規則の整備に加え、従業員全員に対して研修で理解を促し、また管理職向けの更なる研修を定期的に行うなど、意識を一過性のものにしないことが肝要です。

就業規則は、使用者のメッセージを伝えるツールとして、抑止力として、またパワハラが発生してしまった後においては、行為者を処分する根拠として必須です。

まとめ

労働者側

  • パワハラ被害に遭っている場合は、信頼できる同僚や上司、相談窓口に相談します。相談内容は録音するなど記録を取っておきます。あなたが困っているということを知らせる意味があります。パワハラ行為自体も、可能なら録音、録画、メモなどの記録、メールやSNSの書き込みは保存します。
  • 心身に影響が及んでいる場合は、すぐ医療機関を受診します。
  • 慰謝料請求などもあっせん申立てができます。 →支援をご希望なら

会社側

  • パワハラを当事者同士の問題と捉えないことです。民事訴訟になれば社名は公表、上記事例のように使用者責任を問われ社会的な制裁を受けることもあるのです。
  • パワハラは、セクハラ対応のように会社に法的義務が課されてはいません。しかし、パワハラも被害者に重大な結果と、事業活動に支障をもたらす問題であって、適切な対応が求められます。

    そのためには、研修などで従業員の意識に働きかけるソフト面と、就業規則改定や相談窓口の設置などのハード面と両方の整備が必要です。

    それをもってしても、または整備する前などにおいて、会社と当事者が紛争となる場合があります。

    例えば、上記事例の事業部長がパワハラを認めず会社に配置転換処分の撤回を求めてくるなどの紛争には、会社側からあっせんを申立て、早期決着を図ることができます。あっせんなら社名が公表されることはありません。 →ご相談なら

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